思い返せば、離婚を決める前から少しずつ、無意識に夫を受け付けなくなってきていた。最初に自覚し始めたのは、ハグされる時に体が強張るようになった時。
決して気持ち悪いとか嫌だとかは思ってないはずなのに、体が固まる感じ。
次が布マスクの共有が嫌だと思うようになった事。呼吸がしやすく、私も夫も気に入っている布マスクがあって、色もサイズも同じなので名前でも書かない限り洗った後はどっちの物か分からないんだけど、
夫も使ったんだと思うと何となく嫌だなぁと思うようになった。洗ってもその不快感は消えない。
この辺りから、夫の後のお風呂のお湯や石鹸の共有も気が引けるようになった。
元々はすべて全く気にしないで共有できるタイプだったので、自分でも焦った。その頃はまだ夫とやっていけると自分に言い聞かせていた時だったから。
私たちは他の夫婦よりも仲が良いと思っていたくせに、実際気付かないふりしてるだけで、心の距離はどんどん離れていたし、こうやって離婚を決意してから思い返すとそこまで仲良かったのかなって思う。
いや、仲悪くはなかったけど、どこか上辺っていうか、都合の良い時だけ仲が良いと思い込もうとしてた。
超浅い友達関係みたいな。
夫婦の問題を見ないようにして、楽しい時だけ共有して、辛いことや不安はもう自分が我慢するしかないと思ってた。
結婚は人生の墓場だから、私はもう自分に用意された墓に入るだけだから、そしてそれを決めたのは自分なんだから、ちょっとやそっとの事は我慢するべき、それ以上求めるのはわがままなんだって思ってた。
だけど、介護の仕事始めてから、人生の先輩であるお客さまの話を聞いたり、お客さまがご家族からどんな態度を取られているかなどを聞いていると、自分の人生は自分だけの物なのに、本当にこのまま我慢してていいのか、と思うようになった。
我慢した先が、娘や息子から邪険にされたり、夫に先立たれ独居で認知症になったり…だと思うと恐怖すら感じる。
この人の為ならと本気で思えた先なら仕方ないけど、結婚とはこんな物だから…の先がそれなんて辛すぎる。
夫や夫の両親に介護が必要になった時の事も考えてしまうし。介護の仕事は、あくまで仕事だから楽しいけれど、不満を抱えたまま夫や夫の両親に献身的な介護ができる気がしない。
介護職に就いたからこそリアルにイメージできるようになった。このまま夫と一緒にいたら、絶対に後悔する。
私と夫の会話は先週よりさらに減っている。最近は色んな感情を通り越して無。
気まずさすらあまりない。
もはや他人より他人かもしれない。
エレベーターで一緒になった隣人と社交辞令で世間話するような感覚。
つい2ヶ月くらい前まで、結婚記念日だとか夫の誕生日だとか色々言っていたのに、一瞬でちがう世界線にきてしまったみたい。
もしかしたら別の世界線では夫との色んな問題を乗り越えて、仲睦まじく過ごして、来年には子供とか出来てたり、数年後には鬱や会社廃業の話も懐かしい笑い話になってたりするのかなとか、わりと本気で思ったりする。
そんな自分も見てみたかったけどなぁ。